※この話は第一期「魔族、地球へ」の妄想補完となっております。
大丈夫な方のみ、下へお進み下さい。









愛のかたち


「それじゃあ、今日はもうそろそろ寝ましょうか」
遠い世界での息子の活躍ぶりを根掘り葉掘り聞きだした後、美子は満足そうにそう言った。
時刻は既に0時を回り、違う日付けになっている。
ヴォルフラムだけじゃなく、グウェンダルまでが疲れきった顔をしていることから、いかにそれが壮絶であったかが想像される。

「あら、でも家そんなに部屋ないのよねぇ、悪いんだけど誰かゆーちゃんと一緒の部屋で寝て下さらないかしら?」

その言葉に閉じかけていたヴォルフラムの瞼が勢いよく見開いた。

「母上っ!それならばユーリの婚約者の僕がっ!」
「駄目よ、ヴォルちゃんは私と一緒の部屋vもっとゆーちゃんのこと詳しく聞かせてちょーだいねv」



――――まだ話すのかっ!!



誰もが胸中に同じ事を思った。

「だとすると、グウェンダルさんか、コンラートさんなんだけど・・・・」

すっかり固まってしまったヴォルフラムの脇をすり抜けて美子は首を傾げた。

「グウェンダルさんにはちょっとゆーちゃんの部屋はちょっと小さいかもしれないから、コンラートさんでどうかしら?」
「俺は、別に構いませんよ。」

にっこりと微笑を浮かべながら、コンラートが答える。

「あら、それなら決まりねv じゃあウマちゃんはグウェンダルさんを部屋に案内してね、ヴォルちゃんはこっちよ」
「いや、母上僕はユーリと・・・っ!!」
「さぁーいっぱいお話しましょーねv」
有無を言わさずぐいぐいとヴォルフラムを引っ張って行く。

「さ、さすがハマのジェニファー・・・・。」
誰もが不運な彼に同情した。


+++++++++++++++++


「これでよしっと!」
ベッドの横に布団を敷き終えると、ユーリはふぅっと息をはいた。

「わざわざすいません。」
「いや、全然平気。だってコンラ-ト布団なんてひいたこと無いだろ?それじゃあ、今日は疲れたしもぅ寝るか。」
そう言うとユーリは、今ひいたばかりの布団に潜り始めた。

「何してるんですかっ?!」
「何って寝るんだよ。コンラッドはそこのベッド使っていいから。」
「いいえ、俺がそこで寝ますから、ユーリがこのベッドを使って下さい。」

ずるりと布団からユーリを引っ張り出す。

「わ、ば、バカっ、離せよっ!!だってコンラッド今まで布団で寝たことないだろっ!!」
「布団はないですけど、もっと酷い状況で寝たことならありますよ。」

ポスンとユーリをベッドに下ろすと、コンラッドは布団の方へと足を進めた。

「駄目だってば」

ぐいっとコンラッドのパジャマの裾を掴む。

「コンラッドはここでは客なんだから、俺の言うこと聞けよっ」
「臣下の俺が貴方より上で寝るなんて出来ません。」

キッパリと言い切るコンラッドに頭を抱えた瞬間、突然浮かんだ考えにユーリはぱっと顔を輝かせた。

「じゃあさ、一緒にこのベッドで寝ればいいじゃん」

その言葉にコンラッドがピタリと動きを止めた。


「どうかした?コンラッド?」
「・・・・・・いいんですか?」
「へっ?」
「こんなに貴方の香りに満ちた場所で貴方と一緒に寝たりしたら、自分を止める自信なんてありませんよ?」

その言葉に数秒間固まった後、ユーリは顔を真っ赤にさせた。

「や、やっぱりやめ、」
「いいんですよね?」
「いや、だからやっぱりやめ」
「いいんですよね?」
にっこりと笑って言われた言葉に、何を言っても無駄だと悟ったのか、小さく溜息をついた後、諦めたようにユーリは小さく頷いた。

+++++++++++++++++++++



「ユーリ、こっち向いてください。」
毛布をかぶるなり、反対側に背を向けてしまったユーリにコンラッドが声をかける。

「お、俺はこっち向きで寝るのが好きなんだよっ!」
「・・・・・・そうなんですか。あ、ユーリそんなに端に寄ると、」

ぐいっと離れていたユーリの体を抱き寄せる。

「落ちますよ」

耳元で囁かれた言葉にユーリの頬が真っ赤に染まる。

「は、離せっ!!ぜ、絶対今日は駄目だからなっ、隣にはショーリだっているし、それに」
「しませんよ。」
「えっ?」

予想外の言葉に目を丸くする。

「今日は何もしません。約束します。だから、ちゃんとこっちを向いて眠って下さい。」
「・・・・・・本当だな?」

コクリとコンラッドが頷く。それを確認するとユーリはポスンとコンラッドの胸に頭を埋めた。

「コンラッドが嫌いなわけじゃないからな、ただ、家族がいると思うと、その・・・」
「分かってますよ」

その言葉にほっと胸を撫で下ろすと、ユーリはそっと瞼を閉じた。

「でも、」
「えっ?」

ポツリと呟かれた言葉に、そおっと視線を上げる。

「キスくらいならいいですよね?」
「えっ?!」

ユーリが逃げる間もなく、コンラッドの唇がユーリのそれを塞ぐ。

「~~~~~っ!!」

バタバタともがくユーリの手を押さえると、なおも深く口付けを交わす。



「はぁ・・・はぁ・・・・」

ようやく唇が離れると、ユーリは荒く呼吸を繰り返した。

「こ、の・・・っ!!」
「愛してますよ、ユーリ」

そう言って満足そうに微笑むコンラッドを見ると、怒るに怒れなくなる。


「・・・・・卑怯者」

ポツリとそう呟くとユーリはぎゅっとコンラッドの背に腕を回した。
「ユーリ?」
予想外の行動にコンラッドが目を丸くする。

「今度何かしたら絶対に許さないからなっ!」

そう言って、顔を背ける。
その様子を愛しげに見つめた後、コンラッドもそっとその背に腕を回した。

お互いの心臓の音が耳に心地よく響く。



――――今夜は寝れそうもないな



腕の中の愛しい存在を見つめながらコンラッドは幸せそうに瞳を細めた。



++++++++++++++++++++




翌朝、鶏が起きるよりもさらに早く美子は目を覚ました。未だ眠っているヴォルフラムを起こさぬようそうっと部屋を出ると、 一直線にある部屋の前で足を止めた。

カチャリと扉を開ける。

薄暗い室内には、すやすやという寝息が二つ聞こえる。

下に敷かれた布団には人影が無く、ベッドはこんもりと盛り上がっていた。

そのベッドの中でぴったりとくっついて眠る二人を確認すると、美子は静かに扉を閉め、 ゆっくりと来た道を戻ると、再び布団に潜り込み、思いっきりガッツポーズをした。



――――よくやったわ、ゆーちゃんっ!!



これも一つの、子を思う母の愛の形・・・・かもしれない。




コンラッド絶対美子さん見に来たの気づいてますよね(笑

(08.4.28)



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