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ある晴れた日。 授業終了のチャイムが鳴り響き、一斉に教室内にざわめきが満ちる。 「おーい、たっくみぃ帰ろうぜ!!」 「イツキ。」 既に帰り支度を終えたイツキがぶんぶんとカバンを振り回しながら駆け寄って来た。 「今日お前もバイト入ってないんだろ?帰りにゲーセン寄っていかねーか?新しいゲーム入ったらしいぜ」 「別にいいけど。」 「よっしゃー決まり。そうと決まったら早く行こうぜ!!」 のほほんと歩く拓海をせかして廊下を早足で駆け抜ける。 そしてようやく下駄箱に辿り着いた時、ふと二人は違和感を感じて顔を上げた。 「何か今日門の前騒がしくねーか?」 「あぁ、確かに少し。」 「芸能人でもいんのかな?」 「まさか。こんな所にいるわけねーだろ。ほら、早く行くぞ。」 「あ、待ってくれよ!」 先に出て行こうとする拓海の後を慌てて追う。 「まったく、お前いっつもぼーっとしてるくせに、こういう時ばっかり早・・・・・・・・た、拓海っ!!」 「ん~どうしたイツキ?」 どこか慌てたような声に振り返ると、ある一点を指差したままビシリと固ったイツキの姿があった。 「も、門のところ、え、えふ・・・っ!!」 「あ゛~何言ってんだ?」 「も、ももも門のところだよっ!!!」 「もん~??」 その言葉にちらりと門を見て、そこに目にした光景に拓海は目を見張った。 どんなに遠く離れていようと一発で分かる、黄色のボディ。 空でも飛ぶのかと思うようなリアウイング。 そして、その隣でタバコを吸うのは見覚えのある人物で・・・・、 「あれって・・・・・・・・」 何も言えずに二人が呆然と立ち尽くしていると、ふとその人物がこちらに気づき、軽く手を上げた。 「や、やっぱり高橋啓介――――っ?!!!!」 「なんであの人がこんなところに・・・・・」 いつからいたのだろうか、既にその周りには数人の女子学生が取り巻き化している。 だが、それには目もくれずにスタスタと拓海達の傍へ歩み寄る。 「よぉ!久しぶりだな。」 「何でこんなところに・・・・・・」 予想外の人物の姿に、何も言えずにただ呆然と目を瞠る。 「まぁ、ちょっとな。それよりこれから暇か?」 「あ、今日はこれからイツキと・・・・」 その言葉を聞くなり、傍で大きく目を開けたままピクリともしなかったイツキが、慌てて手を振った。 「お、おおおお俺のことはいいから、行ってこいよ!!」 「え?でもいいのか?」 「い、いいから!いいから!」 そこへ啓介が小さく手を上げる。 「悪いな。」 「い、いえ。滅相もございません!!!」 ――――――まさかあの高橋啓介から謝られるとは、きっとこれが一生で最後の体験だろう。 そう言って一人ジーンと感動しているうちに半場流されるように拓海が車に乗り込むと、そのままいい音を響かせて車が動き出した。 それをどこか呆然とした表情で見つめる。 ―――――高橋啓介を待たせるなんて・・・・・・拓海、いつの間にそんな凄い男になっちゃったんだよ・・・―――― 親友に対する評価がまた一つ変わった瞬間だった。 その時、 「ねぇ、イツキ君。今の人知り合いなの?!!」 「え?」 ふと背後から声を掛けられ振り返ると、先ほど取り巻きと化していた女生徒達がわらわらと集まってきていた。 「いや、別に知り合いってほどじゃないんだけど・・・・・」 そうは言うが聞いているのかいないのか、次から次へと質問が投げかけられる。 「何ていう名前なの?!」 「年は?」 「彼女とかいるのかな?!」 「ってか今の人と藤原君ってどういう関係なの?!!」 「紹介してっ!」 「え、えっとぉ~」 こんな大勢の女子に囲まれるなんて一生に一度かもしれないと、嬉しさで引きつる頬を何とか押さえようと、咳払いを一つした瞬間。 「武内!!!!」 どこか聞き覚えのある低い声に振り返ると、生徒指導の先生が仁王立ちしてこっちを睨んでいた。 と同時に今まで取り囲んでいた女子達が一斉にはける。 ――――――――え゛っ?! 困惑するイツキを他所に、その生徒指導の先生はジッとイツキを睨みつけるとゆっくりと口を開いた。 「お前、今門のところに止まっていた車の人と知り合いなのか?」 「え、えっと・・・・」 「あんな派手な車で乗りつけおって・・・どういう人なんだ。」 「えっと・・・その・・・」 「まさか悪い奴らと付き合ってるんじゃないだろうな!」 「ち、ちちち違います!!」 「まぁ、いい。詳しいことは指導室で聞かせてもらおうか。来なさい武内!!」 そう言って、下校中の生徒が何事かと視線を向ける中、引きずられるようにして再び校内に引き戻される。 ――――――ひーっ!拓海助けてくれぇっ!!!!! 声にならないイツキの声が校庭内に木霊した。