~かぐや姫 前編~
むかしむかし、あるところにたいそう勝気な奥さんと、少したれ目の旦那さんが夫婦仲良く暮らしておったそうな。
男はいつも仕事帰りに、竹やぶで竹をとってこらされていたので、人々は彼を「竹とりウマちゃん」と呼んで親しんでおりました。
ある日のこと、その竹とりウマちゃんこと、勝馬がいつものように竹やぶの中に入っていくと眩しいような光がどこからかさしてきました。
「なんだぁ?これは」
不思議に思ったウマちゃんが、そろりそろりと光の方へいってみると、なんと一本の竹が金色に輝いているではありませんか!!
「嫁さんが喜ぶかもしれん」
そう思った勝馬は、さっそくカマを取り出し、竹を切ってみると、竹の中から目も眩むような眩しい光が差してきました。
その光が収まったころ、恐る恐る目を開けてみると、なんと、その切った竹の中に、なんとも可愛らしい男の子がスヤスヤと寝息をたてているじゃあありませんかっ!!
「な、な、な、なんだとぉ~~っ?!!」
すっかり驚いてしまった勝馬は、訳も分からないまま、呆然とその場に立ち尽くしてしまいました。
竹の中の男の子は、スヤスヤと眠り続けたままです。
数刻後、はっと我に返ったウマちゃんはとにかく家に帰らないと、嫁さんに殺されると思い、その竹の中の男の子をほおって行くこともできず、そっと抱き上げ、帰路に着きました。
「あぁ、嫁さんになんて説明したらいいんだ・・・。」
「ただい、」
「遅いっ!!!!」
ウマちゃんが玄関の戸を開けるなり、そこには今にも殴りかからん勢いで、箒を握り締めながら、仁王立ちをした、通称ハマのジェニファーこと、美子さんがいました。
「い、いや、これには訳が・・・・」
「訳もクソもないでしょっ!!いったいどうして、こんなに遅く・・・・」
そこで、ふと美子さんはウマちゃんの手に抱かれた男の子に気がつきました。
「きゃーーーー!!!な、な、な、なにっ?!ウマちゃんこの子どうしたの??もしかして隠し子っ?!!!もしかしなくても隠し子っ?!!私に内緒でっ!!!」
「ち、ちがっ!!!」
「どこの女よっ!!どこの女に産ませたのよっ!!」
ぐいっと襟元を締められてこのままでは殺されると思ったウマちゃんは今までの経緯をきれぎれに話しました。
「・・・・・・・・で、分かってもらえましたでしょうか?」
「・・・・・・・・よ。」
「えっ?」
「この子は神様が私たちに与えてくれた子なのよ、きっと!」
「えぇっ?!」
「ウマちゃんはバカの付くほどの野球マニアだし、しょーちゃんはしょーちゃんでかわいい服もお買い物も、付き合ってくれなくて、すっごく悲しかったの。だから、
きっとこの子はそんな私に神様が授けて下さったのよっ!!」
「よ、嫁さんそれは違うんじゃ、」
「いいえっ!この子は私の子ですっ!!そうと決まったら名前よね、何がいいかしら?どうせならキラキラ~って感じがいいわよねぇ~」
すでに美子さんは心ここにあらずといった感じです。
「そうだっ!ゆーちゃんなんかどうかしら?渋谷有利! いや~んかわいいっ!!ピッタリね!」
きゃあきゃあと声を上げながら美子さんはゆーちゃんを抱きしめました。
「それじゃあ、これからよろしくね、ゆーちゃんvv」
と、まぁこんな感じで、二人はゆーちゃんをそれはもう、目にいれても痛くないほど可愛がりました。
「有利、一緒にキャッチボールしようか?」
「ゆーちゃんままと一緒に、お買い物行きましょv可愛いお洋服いっぱい買ってあげるわよvv」
そんな二人に育てられ、ゆーちゃんはスクスクと大きくなっていきました。
「おふくろっ!!俺のTシャツどこ置いたっ?」
「おふくろじゃなくってママでしょ、ゆーちゃん! あ~もうどうしてこうなっちゃったのかしら」
はぁ、とため息を付いて美子はすっかり大きくなったゆーちゃんを見ました。野球の帰りのせいか、
頭からは汗がつたい、服は所々にドロがつき、真っ白だった肌は、真っ黒とまではいきませんが、日に焼けて、少し小麦色になってしまいまいました。
それでも、小さい頃からの美しさは損なわれてはおらず、むしろ年を追うごとに増しているようで、美しい漆黒の髪は見る人々を魅了して止みませんでした。
当然、そんなゆーちゃんの噂は国内だけでなく、外国にまでも広まっていました。
「あっ!ゆーちゃん、明日は大切な用事があるから絶対あけといてね」
「へっ?別にいいけど。 何で?」
その言葉に美子さんはウフフと笑いました。
「実はね、明日、ゆーちゃんをお嫁に下さい。っていう方々がみえるのよ」
「お、お、お、お、お嫁~~~っ?!!!!」
思わず目を見開いたままゆーちゃんは呆然としてしまいました。
「な、な、な、なんでっ!!!お嫁って、俺男なんですけど。」
「そうねvでも、海外じゃあそういうのもあるそうなのよ、だからママついオッケーしちゃったvv」
「しちゃったって・・・・・冗談じゃねーよっ!!俺は男なんて嫌だっ!!!」
「ゆーちゃんっ!!!」
「はいっ!」
鋭くなった美子の言葉にゆーちゃんは思わず背筋を伸ばしてしまいました。昔からこうなった美子さんには勝てたためしがないのです。
「ゆーちゃんだってもう16なのよ。そろそろ身を固めることだって考えなくっちゃ。
なにもママだって明日決めなさいって言ってるんじゃないのよ? ただ、世界にはどんな人がいるのか分かって欲しいだけの。ねっ?いいわよね?」
「・・・・・・・・・・分かったよ。」
こうなった母親には何を言っても無駄だと分かっているゆーちゃんは渋々ながらも小さく頷きました。
「きゃー、ありがと、ゆーちゃんvvv」
「で、でも会うだけだかんなっ!!絶対け、け、ケッコンなんてないからっ!!」
「はいはい、分かりましたよvv さぁ、それじゃあ早速明日の準備しなくっちゃっ♪」
嬉しそうに駆けていく美子の後ろ姿に、これも親孝行だ、と言い聞かせるようにゆーちゃん小さくため息をつきました。
つづく
あぁ、コンラッドが出てこない・・・。。。っていうかウマちゃん切った竹は何に使っているんだろ? そしてこれはかぐや姫のパロと言えるのか?(06.9.13)