目が覚めるまではいつもと同じだったんだ・・・・・・・・。






++心奥の真実  1++






ふと、カーテンの隙間から差し込む光が顔に辺りユーリはゆっくりと目を覚ました。

「ん゛~・・・・。あれ、ヴォルフラムは?」

いつもなら隣から聞こえてくる寝息が聞こえてこなくて、ちらりと隣に視線を向けるとそこにいつもの姿がなくて、ユーリは不思議に思い首を傾げた。
あの寝起きが悪いヴォルフラムが自分より早く起きるなんて、どんな天変地異の前触れだろう。


その時ふと前髪がパサリと額にかかった。


「あ~昨日洗い流さずに寝ちゃったんだ」

茶色に染められた髪を指で摘みながらそう呟くと、ユーリは窓の外へと視線を向けた。 見ると、いつのまにかもう日がかなり高く上がっていた。


その時、ふとユーリは先ほどから感じていた違和感のようなものに気がついた。


「コンラッドは?」

彼が自分をこんなに日が高くなるまで起こすのを忘れたことなんて今までなかったはずなのだが。


「一体みんなどうしたんだ??」


う~んと唸りながら首を傾げる。

みんなが俺のためにゆっくり寝かしといてくれたのかもしれない。確かに昨日は久しぶりに城下に出かけてはしゃぎまくったせいで夜は熟睡だったし。



でも・・・・・・・、



何故か言いようのない不気味な感覚が全身を覆う。


「とにかく探しに行ってみよう。」


そう言って立ち上がると、まずは着替えるべく服に手をかけた。



++++++++++++++++++++




「一体どこにいったんだ?」

きょろきょろと辺りを見回しながら長い廊下を一人歩く。

だが、何故か不思議なことに誰ともすれ違わない。普段ならここは人通りの多い廊下のハズなのだが・・・・―――。


シンとした空気の中自分の足音だけが響き渡る。


歩けば歩くほどだんだんと不安な気持ちが襲い、ユーリは思わず歩調を速めた。


「コンラッドー!ヴォルフラムーーっ!!どこだにいるんだーーー?!!!」


そう叫びながら曲がり角を曲がった時、突然現れた何かに思いっきりぶつかってしまい、ユーリはバランスを崩して尻餅をついた。


「てててて・・・。」


打ち付けた腰をさすりながら目を開けると、そこには見知った顔が自分を見下ろしていた。

「ダカスコスっ!!」

やっと人に出会えたことで安堵の気持ちが広がっていき、思わず先程までの自分の姿を馬鹿らしく思う。

だが、そんな気持ちも次の瞬間聞こえて来た言葉に凍りついた。


「何者っ?!!」
「えっ」

見たこともないような警戒心を含んだ冷たい視線を向けられユーリは一瞬たじろいだ。

「な、なに言ってんだよダカスコス。俺だよ、ユーリ。」

その言葉に相手の顔色が警戒心のものから敵意のものへと一瞬にして変わった。

「魔王陛下の名を口にするとは、キサマ一体何者?」
「だからぁその魔王陛下だろっ!!」


いい加減冗談にしてはタチが悪すぎる。


「魔王陛下の名を語るとは………っ!!」

だが、そこには期待していた謝罪も冗談めいた顔もなかった。

「誰か来てくれっ!!!」

未だ呆然としているユーリの目の前でダカスコスがそう叫ぶと、廊下の向こうから、剣を持った兵士が数人駆けてきた。さっきまでは確かに誰の気配もしなかったというのに。

「こっちだ!こいつが魔王陛下を暗殺しようとしている侵入者だ!!」
「なっ!!」
その声に反応して兵士達が剣を抜く。


今にも切りかからん勢いで兵士達が近づいてくる。
自分を見つめるその目には確かに敵意が存在して、どんな言葉も今の彼らには通じそうにない。。


「ちくしょっ!!」


悔しそうにそう呟くとユーリは踵を返してその場から逃げ出した。


「逃げたぞ!追えっ!!」


すぐ後ろから兵士たちの声が聞こえてくる中、とにかく無我夢中で先程来た廊下を駆け戻る。


「一体何が起こっているんだよっ!」


廊下を駆けながら頭を巡らす。先程あったダカスコスも兵士たちも何故か自分のことが分からない様だった。 でもそれ以外は普段どおりだった。



ということは・・・・、


「俺のことだけ忘れてるのか?」



その結論にたどり着くと同時に、目の前に武装した兵士達が現れた。すぐさま引き返そうとするが、後ろにも同じように武装した兵士達がすらっと並んでいた。



「・・・・・っ!!」


剣を握り締めて一歩ずつ兵士達が近づいてくる。 その内の一人が剣を振りかぶると同時に全員が同じように剣を振りあげた。



―――――もぅダメだっ!!!――――――



そう思いぎゅっと目を閉じる。




その時、



「何の騒ぎだ?」


突如聞こえてきた声に反応して兵士たちの腕が上空でピタリと止まる。



「・・・・・・・・っ!!!!」



琥珀色の髪に、銀の虹彩を散らしたような瞳。


人垣の中から現れた姿にユーリは思わず目を見張った。それは、自分が今まで探していた人物だった。




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