第四話~恋は急速に~
「コンラッド!待った?!」
「いいえ、俺も今来たところですよ。」
その言葉にほっとしたように息を付くユーリを見てコンラッドは瞳を和ませた。
二人が出会ってから既に一週間が経とうとしていた。あの日、ユーリがコンラッドにペンダントを貰ってから、二人はいつの間にか毎日学校が終わった後この橋の上で会うようになっていた。
「それでさ、そんとき青木がさぁ」
ころころと表情を変えながら今日学校であった出来事をユーリが話すのを小さく相槌を打ちながら聞く。
他人なんてどうでもいい存在でしかなかった頃からは、想像もできなかったことだ。
でも、今は・・・
嬉しそうに話すユーリを見つめる。
――――知りたいと思う、いろんな彼を・・・・―――――
フェンス越しに始めて見た時から、何故かあの漆黒の瞳に囚われていた。
二度目に会ったときは正直驚愕だった。彼の真っ直ぐさは俺の想像以上で、俺のすさんだ心を柔らかく溶かしていった。
彼にもっと近づきたいと、そう思った。
ユーリの胸で揺れる青い石のペンダントに視線を移す。
ユーリにあれを渡したのは、不安だったから。
あの日門の前でユーリを待っているときに見た、彼に寄せる好意の目。と、同時にフェンス越しに見たあの告白の場面が脳裏をよぎった。
自分が入ることの出来ない、フェンスの向こう側での出来事。
気がつくと、あれを渡していた。
もう二度と大切なものを失わぬようにと願いをかけて・・・。
「で、あいつ黒板消しを先生にぶつけちゃってさっ」
くすくすとユーリの笑い声が風に舞う。
思わず伸ばしたくなる手をぎゅっと握り締め押さえ込む。
彼が話す。
彼が怒る。
彼が笑う。
それだけでもう・・・・
――――愛しくてしょうがない・・・・・――――
「どうしたんだよ?コンラッド?」
急に動かなくなってしまったコンラッドを心配してユーリが覗き込む。
「・・・・・・・いえ、何でもありませんよ。それで、青木君はどうしたんですか?」
「そうそう!それでさ、その後呼び出しくらっちゃって・・・」
嬉しそうに再び話し始めたユーリを見つめながら、コンラッドはゆっくりと握り締めていた手から力を抜いた。
―――――今はまだ、このままで・・・・――――――
彼に抱いているこの気持ちを、彼に話してしまったらきっと彼は俺から離れていってしまうだろう。
ようやく見つけた大切なものを失わない為にも、この思いはまだ自分の胸の内だけに秘めておかねければいけない。
大切なものは今はまだ俺の傍にあるのだから。
以前拍手で書いた青木君再登場です。
私の中では彼はかなりのドジっ子に・・・。クラスで上手くやっていけてるのか不安です。
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