第八話 ~終焉に向けて~
「コンラッド!!」
門の前にいた人物に向かってユーリが声を上げる。
と、同時にその声に反応して人影が振り返る。
「ユーリ。」
「ど、どうしてここに?」
あんな会話をした後だからか、正面からその顔が見れない。
「昨日、」
「え?」
「昨日来なかったでしょう?だから心配になって。」
「あっ!」
その言葉に昨日のことを思い出し、思わずユーリは辺りを見回した。
―――――またこんなのが見られたら何て言われるか・・・・・・
「何かあったんですか」
そんなユーリの様子を訝しんでコンラッドが尋ねる。
「え、えっと・・・・話すからとりあえず場所変えよう!」
グイッとコンラッドの背を押すと、ユーリは人込みを避けるようにその場を後にした。
その光景を一人の男が、どこか憎悪の篭った目で見ていたことに、二人は気がつかなかった。
「それで、昨日は何があったんですか?」
ようやく人のいないところまで来ると、ユーリの目をじっと見つめながらコンラッドは尋ねた。
「っ!」
「ユーリ?」
突然のアップに思わずユーリの顔が熱くなる。
「どうかしたんですか?」
「な、なんでもないよ!」
尚、心配げに覗き込んでくるコンラッドから慌てて顔を背ける。
と、同時にさっき屋上で村田に言われた言葉が蘇る。
『――――ウェラー卿に直接聞けばいいんじゃない?』
しかしそう思うのと同時に別の考えが頭を過る。
――――もし、コンラッドが答えてくれなかったら。
――――もし、ジュリアさんがもの凄く大切な人だったりしたら、
俺は・・・・
そう思いつつも、ぎゅっと拳を握り締めるとユーリはゆっくりと口を開いた。
「な、なぁコンラッド。」
「はい」
真っ直ぐに自分を見つめてくるコンラッドと視線を合わせると、ユーリは小さく息をすった後、意を決したように口を開いた。
「あ、あのさ・・・・じゅ、ジュリアさんって・・・・・」
「!」
その言葉にコンラッドの瞳が大きく見開かれた後、細くひそめられる。
「・・・・・・・・・・・・どこで彼女のことを?」
初めて聞くコンラッドの低い声に、思わずユーリの体がビクリと揺れる。
「あ・・お、俺・・・・、」
「誰から聞いたんですか?」
今まで見たこともないような真剣な表情で尋ねられ思わず口ごもる、
と同時にユーリの中に想像したくなかった最悪の場合が浮かんだ。
「ご、ごめんっ!!!!」
「ユーリっ!!!」
背後で自分を呼ぶ声を聞きながらも、耐え切れずにその場から逃げ出すように駆け出した。
しばらくがむしゃらに走った後、ふと目の前に誰かが立ちはだかりユーリは足を止めた。
「君は・・・・。」
どこかで見覚えのある顔だと思っていると、入学式の日に裏庭で告白された奴だった。
どうしてこんなところに、と口を開こうとした瞬間、ユーリはその手に握られたものを見て息を呑んだ。
「っ!」
「き、君が悪いんだっ!こんなに君のことが好きなのに、君は、君は他の男とっ!!!」
そう言って男はぶるぶると震える手で握り締めていたナイフを、ユーリの方へと向けた。
「き、君が悪いんだっ!!!」
「!!!」
そう叫ぶと男はそのままユーリの方へ猛然と向かって来た。
――――――――やばっ!!!!!
思わず反射的に目を閉じる、と同時にドスっという鈍い音が辺りに響き渡った。
「・・・・・・・・・・・?」
しかし、何の痛みもない。
不思議に思いユーリがおそるおそる目を開けた瞬間、そこにいた予想外の姿にユーリは目を見張った。
「コン・・・ラ・・・ド・・・・・・?」
「どうしてここに・・・」と、呆然と目を見開くユーリの頬をふわりとその琥珀色の髪が掠めた。
と同時にどさりという音を立ててその体が地面に倒れ伏した。
「・・・・・・・・・・・っ!!!!!」
次で終わります~♪
長かったなぁ…そしてきっとこれからも長いんだろうな…。